2020年12月25日金曜日

白雁香合 はくがんこうごう


紅毛(*1)香合。


頸の長い鳥形の香合で、白鳥をかたどったものといわれる。


白釉の掛かった軟質陶器で、嘴(*2)や足先などに赤・黄・萌黄(*3)などの上絵の具をさしている。


伝世品は少なく、型物香合番付で勧進元に位置付けられている。

 

*1 おらんだ

*2 くちばし

*3 もえぎ

 



2020年12月18日金曜日

北方青磁 ほっぽうせいじ

中国宋金時代の青磁のうち、華北(*1)の諸窯の青磁を総称して北方青磁とよぶ。


華北では、隋・初唐の七世紀に青磁窯が築かれたが、盛唐以来消息が途絶え、北宋前期になって、華南(*2)の越州窯の影響で再び青磁窯が築かれ、いわゆる北方青磁が焼造された。

 

*1 かほく=中国北部

*2 かなん=中国南部



2020年12月11日金曜日

蹴轆轤 けろくろ


陶磁器の成形用具。


蹴轆轤を使う技法は朝鮮半島から導入されたといわれ、そのため日本では関西以西にこの轆轤を使う窯が多い。


日本で使われている蹴轆轤は上下の円盤を四本の棒でつなげたもので、下の円盤を蹴り轆轤を回転させ、器を成形させる。

2020年12月4日金曜日

細金 ほそがね

表装の細見のことで、本尊表具・唐表具などで天地・中縁・一文字の間に入れる細い筋をいう。


本尊表具では中縁の内の細金を白、外を紫にするが、唐表具・袋表具では種々の色を用いる。


その幅は五厘から七厘(*1)で、太くとも一分(*2)どまりである。

 

 

*1 1.5ミリから約2.1ミリ

*2 3ミリ

 

2020年11月27日金曜日

草の座敷 そうのざしき

 

真・行・草の中で最も正規の格式をはずしたたたずまいの座敷。


具体的には、長押(*1)を付けず丸太柱に土壁であることが、草の座敷に共通する特徴である。


草庵風な茶室はこれに属する小間で、「草の小座敷」ともいわれる。


それは「佗の小座敷」の性格にも通じる。


 

*1 なげし





2020年11月20日金曜日

葛石 かずらいし


細長い長方形の角柱状切石をいう。


建物の基壇などの縁取りに用いられるが、造園材料としては雨落や花壇などの縁石などに用いる。


また、石橋としたり、敷石や飛石の中に配したり、用途は広い。


幅が広いものは、その形から短冊石という。




2020年11月13日金曜日

檜皮葺 ひわだぶき


屋根葺きの一種で、檜皮を葺き材にしたもの。


(*1)の樹皮を立ち木のまま剥ぎ取ったものを、下から順次に葺き竹釘を打って留める。


檜皮は緩やかな曲面を作ることができ、見た目に優雅上品で、瓦葺きよりも軽快である。

 

 

*1 ひのき

2020年11月6日金曜日

阿弥陀堂釜 あみだどうがま


茶湯釜。


繰口、肩は丸みを帯び下がり、胴はほぼまっすぐになる。


羽落ち丸底で布・砂・たたき肌などで鐶付は鬼面。


製作についての逸話が幾つかあるが定説はない。


安土桃山時代後期頃からの好釜として製作されたと考えられる。





2020年10月30日金曜日

著語 じゃくご


禅宗の用語。

古人の説法や問答に、寸評を付けること。

またはその言葉。

韻文のものを頌古(*1)、短い散文のものを著語、やや長いものを拈古(*2)とよぶ。

宋代には、著語は本則の一句ごとにつけられる傾向があり、『碧巌録(*3)』はその代表である。

 


*1 じゅこ

*2 ねんこ

*3 へきがんろく

2020年10月23日金曜日

粥 しゅく


仏教用語。


米二、三分、水七、八分で炊く。


粥十利といい、僧食として十種の利ありとする。


禅林では朝食に粥を食するのが原則であるところから朝食の意ともなる。


平常の白粥のほか、正月十五日の小豆を入れた紅調粥、成道会の雑穀を入れた五味粥などがある。 

2020年10月16日金曜日

秋風袖垣 あきかぜそでがき


透垣(*1)の一種で、輪郭の芯に当たる部分を萩にし、上部は丸くして弧を描くようにし、下部、すなわち内部は黒穂で張ってゆき、中央部に二、三の扇形の覗き窓を意匠した垣根である。


風を通し、萩や黒穂を材料にしているので、この名称がある。

 

 

*1 すいがき

2020年10月9日金曜日

野村美術館 のむらびじゅつかん


昭和593月、京都市左京区南禅寺に開館。


創立者の野村得七(号得庵)は、野村財閥を築いた。


一方その傍ら藪内流の茶道を習い、風流にいそしんだ。


そのコレクションは得庵が、明治から昭和にかけて収集したもので、茶道具が主体である。

 


野村美術館のサイトはこちらから


2020年10月2日金曜日

保津川石 ほづがわいし


庭石の一種。


京都市右京区嵯峨地区、主として保津川流域から採取される自然石。


色彩は種々であるが、暗青色が主で、白条が縦横に入り、美しく品格のある石である。


古くから庭石として愛好され、天竜寺庭園ほか多くの名園に用いられている。

 

2020年9月25日金曜日

木屋町棚 きやまちだな

 

棚物の一種。


京都の木屋町に三井本家の別邸があり、毎年秋に同家で法要が行われ、碌々斎(*1)の代にはその都度献茶が行われていた。


その時の記念の一つとして同家当主の依頼によって碌々斎が好んだ棚。


その町名に由来してこの名がある。

 

 

*1 ろくろくさい=表千家11




2020年9月18日金曜日

巻物 まきもの


横に長い本紙に記された書画を表装し、軸に巻いたものをいう。


巻子本(*1)、軸物ともいう。


経巻・絵巻物などがそれであるが、書簡や目録類もこの形式をとる場合がある。


また反物、長尺ものの布地類も巻物形式の一つといえる。

 

*1 かんすぼん

2020年9月11日金曜日

上田宗箇流 うえだそうこりゅう


上田宗箇を祖とする茶道流派。


宗箇は広島藩家老として国政に参与したため、直接教授せず、野村休夢・中村知元を「上田家茶事預かり師範」として茶技を伝えた。


以降、野村・中村家が交替して師範となる。


現在は16代上田宗冏 (*1) 氏が家元として活動されている。



*1 うえだそうけい

2020年8月28日金曜日

煤竹 すすだけ

 

煤けて赤黒くなった竹。


民家の屋根の下地や天井の竹が長年にわたってかまどや囲炉裏の煙を受けて煤けたものを素材とする。


磨くと美しい茶褐色の色艶を帯びるので、茶筅をはじめとする工芸品の材料や茶室の建材などとして愛好される。

 



2020年8月21日金曜日

青木木米  あおきもくべい


明和4年〜天保4(*1)


江戸後期の京都の陶工・文人画家。通称を佐兵衛。


木米は号で、ほかに九々鱗・古器観・聾米(*2)などがある。


製陶技法を京都の奥田頴川(*3)に学び、古陶器を模倣して造る摹陶(*4)の技に優れ、唐物写の名手とうたわれた。

 

*1 1767~1833

*2 ろうべい

*3 おくだえいせん= 1753~1811

*4 もとう



2020年8月14日金曜日

閼伽井 あかい

 

閼伽は梵語で、供養・功徳の意。


仏や貴賓に備える物をさし、その容器やその内容(浄水・香水)、供物を意味する。


仏に供える水をいい、仏寺に於いて自然に湧出する井泉・閼伽を汲む井戸を閼伽井と称した。


静粛な茶湯における井泉・水屋の根源をなすものと考えられる。

2020年8月7日金曜日

茶具図絵 ちゃぐずえ

 

茶具の寸法書。


著者・発行年未詳。


一冊。


台子・棚・円板・灯台・露地行灯その他の茶具の高さ・幅などの寸法、板の厚さ、および各部分の色塗りなどについて記したもの。


すべてを図解して、各部の寸法を記している。

2020年7月31日金曜日

赤玉香合 あかだまこうごう


呉須赤絵の型物香合。

丸形で大きさに変化があり、大中小と分けられている。

小は小丸といわれ、ことに珍重される。

この種の多くは、器表を四方に割り、赤地、あるいは赤丸と花文を交互に配し、華やかな意匠にしている。

型物香合西方二段二十一位。


2020年7月24日金曜日

一味同心 いちみどうしん


同じ物を飲食すると人々が一体になるという信仰に基づき、多くの人々が共同で飲食して一体感を呼び起こすこと。

キリスト教の聖餐式(*1)・禅寺の茶礼・結婚式の盃事などはこの信仰に基づいた共同飲食の儀礼である。

濃茶の飲み廻しの根底にも、この考えがある。


*1 せいさんしき

2020年7月17日金曜日

豆腐 とうふ


二千余年昔中国に始まったと伝えられる豆腐は奈良時代の遣唐僧らによって我が国にもたらされたと思われる。

鎌倉時代になり再度輸入され、調理法・食法ともに禅寺の日常食品として発達した。

その後江戸時代には一般化して調理法・加工法共に多彩を極めた。


2020年7月10日金曜日

赤石 あかいし


石材の一種。

赤色の庭石を総称する。

佐渡の赤玉石は特に有名である。

各地に産出するが数は少なく、京都府の丹波・貴船、新潟県姫川などから産する赤石は渋い色調で庭石として好適である。

昔から作庭伝書では赤石で吉凶を占っている。

2020年7月3日金曜日

久世切 くぜぎれ

伝藤原伊経筆。

『万葉集』の仮名の歌を抄出した写本の切。

もとは巻物で料紙には丁子吹きを用いている。

筆跡はよく伸び、風韻に富む書風である。

伊経(*1)を筆者と伝えるが、書風と料紙の上から平安時代とおぼしく、書写は12世紀初頭であろう。




*1 これつね/いけい=?~安貞元年(1227)

2020年6月26日金曜日

油障子 あぶらしょうじ


防水性をもたせた障子の一種。

 酢で練った糊を障子紙に塗り、更にその上から油を塗ったもの。

 または柿渋に油を混ぜて塗ることもある。

 多くは西の内紙を使用する。

 出入り口や茶室の突上窓などの屋外に面して雨のかかる場所に用いられる。


 

2020年6月19日金曜日

背割 せわり


木心を含む材木に人為的に割れ目を入れ、不測のひび割れを防ぐ方法。

材木は生木のうちに鋸(*1)で木心に達する溝を切り、これに一定間隔に楔(*2)を打つ。

乾燥後楔を取り、背割のあるほうを裏にして使う。

「心挽き(*3)」ともいう。


*1 のこぎり
*2 くさび
*3 しんびき

2020年6月12日金曜日

且座喫茶 しゃざきっさ


「且」はしばらくの意。

したがって、この句は「しばらく坐して茶を喫せよ」と読み、「どうぞ、まあ、お茶をおあがり」というほどの意味である。

唐代で日常の挨拶語として使われていたらしいが、『臨済録』に禅問答の語として使われている。

2020年6月5日金曜日

葭障子 よししょうじ


(*1)障子の一つで、障子(明り障子)の紙の代わりに葭を編んで作った簾を用いたもの。

葭簾戸・葭戸ともいう。

葭障子に用いる葭は琵琶湖周辺で産出する大尽葭が最良。

葭の本来の読み「あし」が「悪し」に通じるのを忌み「善し」とよんだという。


*1 すだれ



2020年5月29日金曜日

青備前 あおびぜん


備前焼のうち、特に還元焔(*1)焼成気味に焼き上がり、素地中の鉄分が黒青色に発色したものをいう。

明和から寛政頃の伊部手の作品に多く、徳利・小壺・小甕などのほか、置物など彫塑(*2)的な作品にも見受けられる。

そのため青伊部ともよばれる。

*1 かんげんえん
*2 ちょうそ

2020年5月22日金曜日

下草 したくさ


庭園植栽の下木のことで、下木下草と総称するように、下木と区別されているわけではない。

したがって、草物だけをいうのではなく、下木を下草とも称する。

主として添え物の植栽として意匠する。

草木のものでは、ツワブキ・葉蘭・シダなども含まれる。

2020年5月15日金曜日

青石 あおいし


庭石として愛好され、また建築材料として一部で用いられる石材である

庭石として古くから賞美された青石は、紀州青石・阿波青石・伊予青石などである。

青石は南北朝時代の作庭から用いられ始め桃山時代、江戸時代に最も多く用いられた。

2020年5月8日金曜日

青柳茶 あおやぎちゃ


五月の新茶期の芽が伸びきった葉から作る茶。

新芽の全葉が伸びきるまでには、十日近い日数がかかる。

早く開いた葉は、十日もすると、成葉に近くなるので細く揉み上がらない。

従って、精製工程で篩い分けられ番茶なみの扱いとなる。

川柳などもこれに属する。


2020年5月1日金曜日

煮付け につけ


煮物のうち煮汁をほとんど残さず、甘辛く煮上げたものをいう。

鍋の周囲にこびりついた煮汁を、濡れ布巾で丁寧に拭い取ると苦みが混じらない。

煮汁をたっぷりに仕上げたのは、煮付けに対してさわ煮といっている。

野菜類を煮付けたものは、旨煮(*1)である。


*1 うまに

2020年4月24日金曜日

淡路砂利 あわじじゃり


庭園材料の一種。

花崗岩(*1)の小石で、淡路産のものをいう。

大きさは三センチないし六センチ内外である。

庭園の補助材料として好んで使用される。

この種のものは、関西では神戸六甲山系、関東の湘南地方からも産出するが、淡路産を本場ものという。


*1 かこうがん

2020年4月17日金曜日

畳紙 たとうがみ


たたみ紙の音便。

横に二つ、縦に四つに折り、幾枚も重ねて懐中した紙のこと。

また道具や衣服を畳んで入れる厚手の包紙も畳紙と呼び慣わしている。

茶湯では紙釜敷として用いたり、煙草を包み入れたりする。

用紙としては檀紙・奉書紙・唐紙などが用いられる。


2020年4月10日金曜日

大津壁 おおつかべ


日本壁の一つ。

色土を主体とし、これに消石灰などを加えて水練りした上塗材料で、漆喰壁と類似。

特に良質の白土と石灰の産地で京阪に近いために主要な材料供給地となっていた大津にちなんだ名称。

表面を磨いて光沢を出したものを大津磨きという。



2020年4月3日金曜日

密参箱 みっさんばこ


 秘伝書などを入れておくための箱。

皆伝者に与えられた。

符号のついた厳重な錠前がつけられていて容易に開閉できない構造になっている。

蓋裏に又玄斎一燈(*1)の書付のある欅(*2)の密参箱や、玄々斎精中(*3)の書付のある柾目の桐の箱が裏千家に残っている。


*1 ゆうげんさいいっとう=裏千家81719-1771
*2 けやき
*3 げんげんさいせいちゅう = 裏千家111810-1877

2020年3月27日金曜日

回青 かいせい


 染付に用いるコバルト顔料の一種で、回々青ともいう。

回あるいは回々とは西アジアのイスラム圏をさし、この方面からもたらされたことを示している。

元時代に景徳鎮窯で初めて染付が焼造された時この回青が用いられたらしい。

2020年3月20日金曜日

別所吉兵衛 べっしょきちべえ


 利休時代の陶工で、京都に住し、古瀬戸の模作をしたという。

その後は代々七里市兵衛を称し、万屋を屋号としたと伝えられる。

なお一説に、吉兵衛は遠州時代の茶入の名工で、瀬戸・伊賀・伊部などに往来し、遠州好みの茶陶製作に協力したといわれる。


2020年3月13日金曜日

湯返し ゆがえし


棚物や台子などを用いた点前の終わりに、柄杓で水を汲んだ後、ただちに一杓湯を汲み、その湯を再び釜に返すことをいう。

柄杓を柄杓立または棚の上に飾る場合に行い、柄杓の合が早く乾くようにするためである。

但し運び水指の場合には行わない。

2020年3月6日金曜日

喝 かつ


中国唐代以後の禅宗、とりわけ臨済宗の禅僧が、言語道断な悟り・真理の消息を、論理的な説明などを借りずに、端的直截に他に伝え、あるいは他を導くために、「カーッ」と全身全霊からほとばしらせる一種の叫び声。


-

2020年2月28日金曜日

麻紙 まし


麻を原料とする紙。

麻皮をつき砕いてつくるものと、すでに布となったのを晒してつくるものとがある。

写経などに多く用いられたが、天皇の詔書・勅書・宣命(*1)などはこれに書く。

五色その他の色に染められ、いわゆる色紙の源流となった。



*1 せんみょう


2020年2月21日金曜日

格天井 ごうてんじょう


格縁(*1)を格子状に組んだ天井。

組天井ともいう。

格式の高い形式で、仏間とか上段の間などに用いられるが、茶座敷にも採り入れられた例がある。

水無瀬神宮内の灯心亭のように格縁の配列を吹き寄せることによって、表現を和らげることもできる。


*1 ごうぶち

2020年2月14日金曜日

凍豆腐 こおりどうふ

しみ豆腐・高野豆腐ともいう

高野山やその近傍の寒冷の地で始まった。

極寒夜に豆腐を屋外にさらして凍らせ、それを米の磨ぎ水で煮たうえ藁で数個を結んで干し上げる。

幕末からは大和山辺郡小倉が産地に加わったが、現在は人工冷凍の製品がこれに代わった。

2020年2月7日金曜日

如意庵 にょいあん


臨済宗大徳寺派の塔頭(*1)

山内の北方に所在する。

至徳年間(*2)頃に大徳寺七世言外宗忠が退去庵として開創。

没後に言外の塔所となった。

当初は現在の本坊庫裏(*3)の位置にあったが、その後、寺地を転々と移し、廃絶。

近年、現在地に再興された。

*1 たっちゅう=禅寺における山内の小院
*2 1384-87
*3 くり

2020年1月31日金曜日

長炉 ながろ


炉の一種。

長方形をしたものをいう。

もともと暖房用に使われていたもので、一條恵観山荘や桂離宮で見ることができる。

茶の方面ではほとんどが水屋用で、控え釜を懸けたり、懐石料理の炊事に用いる。

表千家点雪堂の長炉がその典型である。