無名の町塗師の手になる粗末な棗。
木地・塗りとも粗雑ではあるが、侘びた作ゆきに茶味を見いだし、利休をはじめとする茶人に取り上げられたが、形に対する厳しい選択眼も見逃せない。
千家名物の利休町棗再来は著名。
これが町棗を最初に採り上げた例とされている。
大阪府堺市。
安土桃山時代前後に貿易都市として発展し、納屋衆(*1)とよばれた有力町衆によって都市自治が行われた。
上層町衆の間では茶湯が盛行し、武野紹鴎・千利休・津田宗及・今井宗久・山上宗二など一流の茶人を輩出し、茶道文化の発展を担った。
*1 なやしゅう
仏教用語。
左右の掌(*1)を合わせ、仏を礼拝し、人には恭敬を表すインド以来の礼法。
神聖な右手、不浄な左手を合わせ、本来人間は神聖なるものと不浄なるものとを合一したところに真の姿があるという思想を示したものであるという。
*1 たなごころ
禅院用語。
禅院で住持や重役に従ってさまざまな用務をする使用人。
寺内に住み、多くは得度せず、俗体のまま務め、また妻帯する者もあった。
六祖慧能(*1)禅師は行者の身分で五祖弘忍(*2)禅師に嗣法(*3)したことはよく知られている。
*1 ろくそえのう=638年〜713年
*2 ごそこうにん=602年〜675年
*3 しほう=法統を受け継ぐこと